神のよりしろたる神輿や山車に化学製品を使っていいかどうか。
その答えは神のみぞ知ると思いますが、八戸三社大祭の山車作りにおいてはそんな議論はとうの昔に通りすぎて発泡スチロールやプラスチックなどの化学製品オンパレード、油圧・電動どんとこい。
八戸の三社の神は寛容です!
今さら「ビス禁止!竹釘使え!」とか言われても山車完成できませんよね。
そして八戸や久慈、三沢や五戸、その近郊の市町村や遠く離れて山形県の新庄まつりでも山車作りの必需品となっているであろうグルーガン。
今回はそのうちでも電池式や充電式、コードレスのものなどをまとめて紹介してみたいと思います。
ホットメルト?グルーガン?どう違うの?
まずは基礎知識。
山車組によって、または人それぞれで色んな呼び方をされるグルーガンやホットメルト。ホットボンドと呼ぶ人もいます。
種類や材質によって呼び方がどう分かれているのでしょうか。
”弾”はホットメルトまたはホットボンド
「グルースティック」という商品名でよく売られている接着剤となる部分。
この部分がホットメルト(またはホットボンド)です。現在普及しているのはスティック状のものですが、粒状のものやシート上のものもあります。スティック状のものは太さ7mmと11mmの2種類があります。
ホームセンターや100円ショップで売られているものは大抵EVA樹脂(エチレン酢酸ビニル)が主成分のものがほとんどです。
絶縁性が高く基盤の補強やコーティングなんかにも使われますし、溶剤を使っていないためアクアリウムにおいても多用されます。
”銃”はグルーガンまたはホットガン
現在流通しているものの殆どが銃の形をしていますが、このツールがグルーガン(またはホットガン)です。
電源はAC電源のものが主流ですが、乾電池式や充電式、ガス式などもあります。
ホットメルト(接着剤)はトリガーを引くことで手動により押し出されるものが多く、射出ノズルと加熱筒の延長線上にある後部の穴からスティック状のホットメルトを充填します。
ヒーターは意外に丈夫で初期不良品を除いてなかなかヒーター切れを起こすことはないが、逆に100円ショップのものなど安物は安全機能がないため電源が供給されている限り永遠に加熱し続けるため火災の危険があります。
気がつけば茶色く変色したドロドロのメルトだまりに浸かるグルーガンを目にすることも。(非常に危険)
オートオフ機能やヒューズが付いているものか、または電源との間にタイマーやブレーカーなどを挟んで使いましょう。
コードレス式 グルーガン
てことでやっと本題ですが、今回は7種類のコードレス式グルーガンをご紹介します。
電源コードが不要なので取り回しが楽、そして電源から遠い山車の上でも気軽に作業ができます。
比較基準となるよう、出回っている下記のAC100V電源式2機種のスペックも載せておきます。
メーカー | 型番/品名 | 消費電力 | 電源 | 電源ON/OFF |
---|---|---|---|---|
セリア | グルーガン | 10W | AC100V | コンセント 抜き差し |
SK11 | GM-100 | 12W | AC100V | コンセント 抜き差し |
乾電池式 グルーガン
[ 乾電池式コードレスグルーガン GG-210CL ]
EARTH MAN(高儀)
―― コードレスで快適作業 LEDライト付きで狙いを外さない ――
メーカー | 型番/品名 | 消費電力 | 電源 | 電源ON/OFF |
---|---|---|---|---|
高儀 | GG-210CL | 8W | 単3電池 ×4本 |
スイッチ |
射出ノズルの下部に0.5WのLEDを兼ね備えたコードレス式グルーガン。
電源は手軽な単3電池4本ですが、8Wとなかなかの出力ですので連続使用は厳しいかもしれません。
そしてその電池をグリップ部分に内蔵しますので、グリップが太く全体も大きめの外観となっています。
ただしトリガーも大きめで2本指で引くようにデザインされていますから、接着剤の射出は軽くグリップの太さがあまり気になりません。
右手で握るとちょうど親指部分にON/OFFのスイッチが付いていますから使い終わったらすぐにOFFにすることができます。
[ 電池式コードレスグルーガン 20303 ]
スリーアキシス(ミツトモ製作所)
―― 屋外でも、暗い場所でも使えます! 連続使用40分! ――
メーカー | 型番/品名 | 消費電力 | 電源 | 電源ON/OFF |
---|---|---|---|---|
ミツトモ | 20303 | 7W | 単3電池 ×4本 |
スイッチ |
こちらは上記のEARTH MAN/GG-210CLと外観はほぼ一緒でOEM品と考えられます。
ただし公表されている消費電力が7Wと少し小さいので、もしかしたら内蔵されているヒーターが小さめなのかもしれません。
その代わりかどうか、連続使用時間40分をうたっていますから、GG-210CLより「細く長い」タイプと考えていいかと思います。
こちらもLEDライト、手元スイッチ搭載です。
USB電源式 グルーガン
[ USBグルーガン USBGLG5E ]
サンコー
―― おまえの充電をよこせ! 俺がドロドロに溶かしてやんよ! ――
メーカー | 型番/品名 | 消費電力 | 電源 | 電源ON/OFF |
---|---|---|---|---|
サンコー | USBGLG5E | 不明 | USB | スイッチ |
こちらは正確に言うとコードレスではないかもしれませんが、USBから電源を取れるのでスマホの予備バッテリーとして使われるモバイルバッテリーがあれば使えるというもの。
胸ポケットにモバイルバッテリーを入れれば電源コードは胸からグルーガンの間だけなので、壁コンセントから電源コードを引っ張るのに比べるとかなり作業場所の自由性があります。
消費電力についてメーカーからの公表はありませんが、どうやら3.6Wほどのようです。それでも十分にホットメルトは溶けるとのこと。
また最近発売され始めた超高容量バッテリー搭載のスマホなら、そのままグルーガンの電源として使えそうですね。
充電式 グルーガン
バッテリーグルーガン GluePen
BOSCH(ボッシュ)
―― 軽量・コンパクトで使いやすいペンタイプ ――
メーカー | 型番/品名 | 消費電力 | 電源 | 電源ON/OFF |
---|---|---|---|---|
BOSCH | GluePen | 5.4W | 3.6 V Li-ion バッテリー |
スイッチ |
一気に価格が上がりますがこちらは電動工具メーカーのボッシュ製なので信頼度も跳ね上がります。
そして3.6Vリチウムイオンバッテリー搭載の充電式。
ボッシュのラインナップに3.6Vリチウムイオンバッテリーを使う電動ドライバーがありますが、このGluePenは内臓バッテリーなので電動ドライバーのようにバッテリーを外して充電器にセットする形ではなく、直接充電コードを本体に差し込む形になります。
よってバッテリーを使用しての作業の他にコードを繋いだままでの作業も可能です。
そして充電コードの差し込みはmicroUSBですから、上で紹介したUSBGLG5Eのようにモバイルバッテリー直結での作業も可能。
またもう一つ注目すべきなのが余熱時間です。
AC100V電源式を含め他の一般的なグルーガンは余熱時間が5分ほど必要な物が多いのですが、このGluePenはなんと余熱時間15秒。スイッチを押して15秒後には溶けたホットメルトの射出が可能なのです。
これは時間的な効率も含めて作業性が大いに高まりますね。
※2017年追記:
こちらのグルーガン、購入して使用しましたが、ホットボンドの送り機能があまりよろしくなく、水平より上向きで使おうとするとホットボンドが後ろ側にスルッと落ちてしまいます。これは作業場かなりストレス。ここが改善されない限りおすすめできません。
ガス式 グルーガン
熱着ボンドプロ SHB-01
ENGINEER(エンジニア)
エンジニア/エンジニア 熱着ボンドプロ【SHB-01】(2883872) [その他]
メーカー | 型番/品名 | 消費電力 | 電源 | 電源ON/OFF |
---|---|---|---|---|
ENGINEER | 熱着ボンドプロ SHB-01 |
ガス排出量:0.2(g/min) | 工業用無臭液化ブタンガス | 着火 スイッチ |
こちらはわかりやすく言うとガスバーナーが内蔵してあり、加熱筒を炙って接着剤を溶かす方式です。
コテライザーというガス式半田ゴテが現在でも流通していますが(からくり屋永匠堂も使っています)、それと同じ方式ですね。
ターボライターのようにガスの充填口があり、そこに缶タイプのガスボンベを押し当て充填する構造になっています。
ぶっちゃけターボライター用のガスでも使えますが、充填口の形状が完全には一致しないため充填時にかなりの量のガスが漏れてロスが大きいので、やはり専用のガスボンベを購入したほうがいいと思います。
しかしこの製品、Amazonのレビューもガタガタですし何より発売元のENGINEERではすでに販売終了となっているので、製品自体の質はかなり低いようです。
価格も高いし全くオススメしません。
電源コード取り外し式 グルーガン
コードレスグルーガン GG-200CL
EARTH MAN(高儀)
メーカー | 型番/品名 | 消費電力 | 電源 | 電源ON/OFF |
---|---|---|---|---|
EARTH MAN |
GG-200CL | 6W | AC100V | コンセント 抜き差し |
こちらは「コードレス式」をうたっていますが、正しく表現すると「コードレス(状態にもできるように電源コードを本体から取り外せるよ!)式」です。
一般的なAC100V式と同様に電源コードを繋いで余熱し、接着剤が溶けたら本体底部のコネクターから電源コードを外して持ち運べるというもの。
もちろん冷めるまでが勝負、冷めたらまたまた電源コードをつないで再加熱が必要です。
もしかしたら加熱筒が肉厚になっていて蓄熱量が大きいのかと思いましたが、メーカー公表では「5分間ヒーティング後、2分間コードを外して使用可能」となっていますので、これは一般的なAC100V式でコンセントを抜いた状態とあまり変わりません。
本当に「電源コードが本体側で着脱可能」という点のみが売りの商品です。
【番外編】 DIY コードレス グルーガン
やっつけ手作りグルーガン
―― やけどに注意! ていうか既成品使おうよ? ――
メーカー | 型番/品名 | 消費電力 | 電源 | 電源ON/OFF |
---|---|---|---|---|
あなた | 不明 | 不明 | 火 | トリガー |
最後に紹介するのはもはや「サバイバル山車作り」と呼んでも過言ではないほどの機材不足の際に役立つかもしれない、いや役にはたたないし覚えておかなくてもいいやっつけ手作りグルーガンの作り方。
制作過程の動画をご覧ください。
指熱そうだし100円ショップのグルーガンのほうが安く済むし臭いも凄そうだし、とデメリットしか思い浮かばないこのインパクト溢れるグルーガン。
これが必要なほどの状況はなかなかないと思います!
製作者によるとコカ・コーラの缶はアルミだけどペプシは鉄だからペプシじゃなきゃダメなんだよ!と力説しています。
うん、どうでもいい!
オススメはGG-210CLとGluePen
ここまで数種類のコードレスグルーガンをあげてみましたが、からくり屋永匠堂のおすすめは低価格帯だとEARTH MANのGG-210CL、長く使い続けたいならBOSCHのGluePenです。
どちらも工具メーカーという点も安心ですね。Amazonを含め各通販サイトのレビューも上々です。
今年の山車製作、電源争奪戦やコードの取り回しに悩まずホットメルト作業をしてみませんか?
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