Aのお土産 ~初春花形歌舞伎~ 【菅原伝授手習鑑】を山車目線から見る


洗顔後にいつも付けているクリームがなくなったので、妻の化粧水をこっそり使ってみたらしっとりもちもちになったからくり屋永匠堂です、こんにちは。

女性向けの化粧品って凄いですね。

高いだけある…。

 

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花王
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さてさて。

先日、八戸市職員互助会で山車製作をしているアカサカくんからお土産をもらいました。

それがこちら。

ババーン!

 

平成28年 初春花形歌舞伎 パンフレット!

 

うっほほーいと喜びながらパラパラっとめくります。

なんだか著作権とかについてちゃんと書いていないので、どれくらい中身を見せていいのかよくわかりませんが恐る恐る…

どうか怒られませんように。

 

チラッ

 

 

チラッ

 

 

くうううぅぅ!

かっこいい!!

1枚目は車引(くるまびき)、2枚目は白浪五人男(しらなみごにんおとこ)です。

 

今回は1枚目の写真の

「車引」

その話を含む菅原伝授手習鑑について、からくり屋永匠堂が自分の曖昧な記憶を補いつつ勝手な解釈により解説してみたいと思います。

すごく面白いストーリーなので楽しいですよ!

 

菅原伝授手習鑑

車引は菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)の一幕です。

菅原伝授手習鑑は5幕からなるとても長い話で全てが通しで上演されることはほとんど無く、三幕目の「車引」四幕目の「寺子屋」がそれぞれ単独で上演されることが多いです。

山車の題材として扱われるのは「車引」が圧倒的に多いですね。

 

「車引」の場面はひたすらかっこよくて山車にした時もとても見栄えしますが、歌舞伎においても「ひたすらかっこいい」ことだけに重点を置いたような場面構成ですからそれもうなずける話です。

しかし、やはりバックボーンとなるストーリーを理解してたほうが人形の表情やポーズ、そして配置などを考える上でリアリティが生まれるはずですから超ざっくり解説してみます。

でもちゃんと知りたい方はちゃんとした解説サイトとかを見て下さいね。

 

まずは登場人物。

主人公は運命に翻弄される三つ子の兄弟、梅王丸松王丸桜丸

そして重要人物のうち、いい人は学問の神として有名な右大臣菅原道真帝の弟の斎世親王道真の元弟子の源蔵夫婦

悪い人は帝位を狙う左大臣藤原時平

とりあえずこの人たちだけ覚えておけばOKです。

 

農家に生まれた三つ子の兄弟、梅王丸・松王丸・桜丸は菅原道真の計らいで貴人の乗る牛車引きとして働いています。

つまり三人にとって菅原道真は大恩人であり、さらに名付け親でもあります。

そしてそれぞれの就職先は

  • 梅王丸→菅原道真
  • 松王丸→藤原時平
  • 桜丸→斎世親王

となっていて、位だけ見ると右大臣・左大臣・親王ですが、帝位を守るもの・帝位を狙うものと立場が別れてしまっています。

その結果3兄弟のうちでも、梅王丸と桜丸は松王丸を恩知らず呼ばわりです。

松王丸は恩人のライバル企業の社長専属運転手みたいなもんですからね。

 

と、ここまでが前提で、さらに色んな事件が起きていくわけです。

 

第一の事件「道ならぬ恋」 in 加茂堤

そんな面倒くさい情勢なのに、帝の弟の斎世親王はよりによって菅原道真の娘、苅谷姫と付き合いはじめてしまいます。

そしてそれを応援しちゃうのが車引、つまり専属運転手の桜丸

加茂堤で待ち合わせ、道真の娘と斎世親王を牛車の中で密会させてあげます。

しかしその情報が藤原時平に漏れていて、時平側の家来がやってきますが何とか二人を逃がす桜丸。

この二人の恋が発覚してしまうのが第一の事件です。


この場面を山車に盛り込むとしたら、やはり牛車の中で手を取り見つめ合う斎世親王と苅屋姫でしょう!
からくり屋永匠堂おすすめの場所は山車向かって右側手前、八戸の山車で言うと左回転です。
ポイントは優しい眼差しを向ける斎世親王と少し頬を赤らめた苅屋姫の表情ですね!


 

第二の事件「筆法伝授」 破門された弟子 vs 才なき弟子

次に事件が起きるのは菅原道真の家。

菅原道真は国家随一の書道家。その極意を誰かに伝授しなさいと帝に命じられ悩みます。

息子はまだ幼いので弟子の誰かが自動的に候補となるのですが、今いる弟子はなんだかイマイチ

そこで過去に破門にした弟子を呼び寄せます。

書の道において見込みがあったのに従業員の女性に手を出して破門にされた源蔵さんです。

今はその女性と結婚し、片田舎で塾を開いて生活しています。

イマイチ弟子の妨害にもまけず道真のテストを見事クリアした源蔵、筆法の極意がギュッと詰まった巻物を受け取りますが、破門は破門!と再び追い出されます。

しかし筆法を伝授された源蔵は、尊敬や恩義、申し訳無さの気持ちも相まって、陰ながら忠義を尽くすことを誓います。


この場面は数少ない菅原道真の見せ場です。神格化された菅原道真の筆法を山車に表現できれば最高だと思います!
筆を構える道真、ブワーッと広がり流れる巻物なんかあるとかっこいいですよね!(実際はそんなシーンありませんけどね。)
おすすめの場所は、「菅原伝授手習鑑」として題材にするならやはり主役!最上段センターです。
ポイントは、魂を宿した字がそこに生まれていくかのような筆を構えるポーズの躍動感と、筆の先に見えない紙があるように思わせる眼力ですね!


 

 

第三の事件「道真拘束」 政敵・時平の罠

これもまた第二幕「筆法伝授」において起きる事件です。

筆法の極意を源蔵に伝授するやいなや朝廷から呼び出される菅原道真

急いで出発準備をする道真、かぶっていた烏帽子が突然落ち「これは不吉!?」と思う道真ですが、朝廷からの呼び出しなので行かないわけにもいかず出発。

破門の身ゆえに出て行くよう言われた源蔵夫婦、尊敬する菅原道真の姿を見るのはこれが最後かもしれないと泣く泣く見送ります。

ここで場所は変わって菅原家の門外

門の外に出るとなんと菅原道真が拘束されてしまいます!

門の外で待ち構えていたのは政敵であり更には帝位をも狙う藤原時平の家来たち。

「第一の事件」において道真の娘・苅屋姫が帝の弟・斎世親王と駆け落ち状態となっているわけですが、道真が自分の娘を送り込み謀反を企てているに違いないと藤原時平が帝に吹き込んだのです。

さらには道真のイマイチ弟子も裏切り時平側についています。最初から最後までムカつく奴です。

ここで主人の危機と菅原道真の車引、梅王丸が登場!暴れようとしますが道真になだめられ、悔しながらもこらえます。ここで梅王丸が暴れても道真の立場が悪化するだけですからね。

こうして囚われ連行される菅原道真

しかし時平の家来たちはまだ屋敷を取り囲み、道真の妻子までも狙います。

ここで屋敷から出てきて事情を知る源蔵夫婦、こっちはおもいっきり暴れます!破門の身なのでフリーダム!ノーフィアー!です。

時平の家来たちを全て倒した源蔵夫婦は道真の子・秀才くんを田舎の自宅に匿うためあずかります。

そして梅王丸は道真の奥さんと屋敷を守ると約束し、秀才くんをおんぶして去っていく源蔵夫婦を見送るのでした。


この場面、車引の場の次に派手な戦闘シーンですのでそこを使いたいですね!
秀才くんを守るように、刀を構える源蔵と短刀を持つ妻の戸浪が背中合わせで立ってたりするとかっこいいと思います!
源蔵夫婦は「菅原伝授手習鑑」のうちで最も上演回数の多い「寺子屋」でも準主役級で登場しますが、この「筆法伝授」終盤の活躍のほうが山車の上では栄えると思います。
おすすめの場所は山車向かって左側手前、八戸の山車で言うと右回転です!


 

第四の事件「道真の神術」 そして親子の別れ

菅原伝授手習鑑のうちの一幕、「道明寺」より。

藤原時平の罠によって九州への左遷が決まってしまった菅原道真

しかし時平は、道真の失脚だけではなくさらに道中での暗殺を謀ります。

この「道明寺」では道真が木彫りの像を使った身代わりの術により暗殺者を煙に巻いたり、第一の事件から身を隠している道真の娘・苅屋姫が道真と会おうとするけど道真の意向により直接対面はできず、といった内容の場面です。


 

ぶっちゃけ山車では表現しにくい場面なので使い所はないと思います!


 

 

第五の事件「時平襲撃」 車引の三兄弟大喧嘩

さあ、とうとう「車引」の場面です!

梅王丸・松王丸・桜丸の三兄弟にとって大恩人の菅原道真

しかし菅原道真は藤原時平の罠によって失脚のうえ左遷されてしまいました。

菅原道真の車引だった梅王丸は主を失い無職確定です。

斎世親王の車引だった桜丸も主が時平に追われ行方不明のまま。

梅王丸と桜丸の2人は諸悪の根源・藤原時平に一矢報いようと襲撃を決意します。

そして通りかかる藤原時平の牛車。もちろん車引は松王丸

車引三兄弟の大喧嘩が始まります!

喧嘩の最中、牛車が壊れ悪の権化・藤原時平がついにその姿を表します!

藤原時平の隈取は悪役の代表格で「時平隈」と名前もついています。

ここで藤原時平が悪役の大玉らしくグワッと見得を切り、梅王丸・松王丸・桜丸の3人も大きく見得を切りババーン!と決まったところで幕となります。

実は「車引」の場面はストーリー上はこれだけ。

最初のほうで言ったように荒事として「ひたすらかっこいい」ことだけを強調させた場面なんです。


この場面はもうカッチリ型が決まっているというか、「車引」と聞いて誰もが連想する絵面をそのまま表現するのがいいと思います!
梅王丸・松王丸・桜丸がそれぞれの見得を切り、後ろで壊れた牛車の上に立つ藤原時平。
演目上でも有名役者が演じる4人が同時に見得を切る場面ですので大歓声があがります。
おすすめの場所は山車の中央、下段から中段にかけてです。
ポイントは隈取の再現度、そして手のひらの開きや首の角度など見得をどれだけかっこよく表現できるかですね!


 

 

第六の事件「桜の枝、折れる」 賀の祝とそれぞれの願い

完全に決裂してしまった三兄弟。

それを心配した三兄弟の父・白太夫とそれぞれの妻は、父・白太夫の古希の祝いとして全員に集合をかけます。

しかし桜丸は欠席松王丸と梅王丸はやはり喧嘩を始めてしまい、それをいさめた父にそれぞれお願いをします。

梅王丸は九州に左遷された菅原道真の元へ行きもう一度仕えたいということ。

松王丸は大恩人の敵に仕えている自分を一家から勘当してくれということ。

父は悩み、松王丸の願いだけを聞き入れ勘当し、梅王丸の願いは却下。

しかし父・白太夫が最も気を病んでいるのは桜丸のことでした。

実は桜丸は一人、先に生家へと着ていて奥の部屋にいたのです。

桜丸は自分が斎世親王と苅屋姫の隠れデートを手伝ったことが、結果として大恩人・菅原道真の失脚につながったと考えました。

そして父のもとへと切腹の許しを得るため先に訪れていたのです。

 

皆が父の家から帰っていった後、父の願いも虚しく桜丸は切腹してしまうのでした。

 


この場面も山車の上で表現するには難しいので使うことはないと思います!


 

 

第七の事件「秀才の首」 寺子屋にて松王丸と源蔵、対峙

さあ大詰めです。

第三の事件で菅原道真の子・秀才くんを匿った源蔵夫婦

菅原道真を左遷に追い込み権力を掌握した藤原時平によって秀才くんは指名手配になってしまっています。

源蔵夫婦は田舎で塾を営んでいますが、村長さんからこう言われてしまいます。

「秀才を匿っているのはもうオカミにバレバレなんダヨ。ユー捕まる前に自分で秀才の首を差し出しちゃいナヨ。」

そんなこと言われて裏切る源蔵さんじゃありません。

恩と忠と義のためならどんな手段もいとわない源蔵は、寺子屋に通う子の中から身代わりを立てることを決意します。

そしてとうとう村にやって来る藤原時平の家来と松王丸

時平陣営の中で唯一秀才くんの顔を知っている松王丸が選任されたというわけです。

村人が一人一人自分の子を連れ帰る中、いよいよ身代わりをどうするか…。

しかし偶然その日から通い始めた子が一人いました。しかもまだ誰も迎えに来ません。

源蔵は決意、その子を身代わりに首を斬ります。

(この辺は時代背景的に「命と忠義」の天秤が現代と全く違うところですね。)

さて首の入った箱を松王丸に差し出す源蔵。ドッキドキです。

ここでバレたら松王丸含め全員相手に戦う覚悟

しかし予想外にも松王丸は「これは間違いなく菅原秀才の首である!」と断言。

その首を持って時平家来一同去っていきます。

すると現れた身代わりにした子の母親。子を殺してしまったので母も殺す決意をする源蔵。後から偽装がバレたら台無しになってしまいますからね。

しかしその母はこう言います。「息子の首はお役に立ちました?」

!?

ななななんだと?!なぜそれを!?と焦る源蔵。そこに投げ込まれる松の枝。その間に去っていく謎の母。

そして松王丸が再登場。ここから松王丸の激白です。

なんと松王丸は菅原道真への恩義を忘れたわけではなく、藤原時平の元へととどまりいつか道真の恩に報いるチャンスを伺っていた。

そして先程の謎の母は松王丸の妻身代わりになった子は松王丸の子だったのです。

こうして実は味方だった松王丸

おいしいところがっぱり持って行きますね!

三兄弟がそれぞれ歩んだ道を描いた壮大なストーリーは、この後藤原一味が天災により滅び、秀才くんによって菅原家は再興するという大円団を迎え終了となります。


菅原伝授手習鑑のなかで最も上演回数の多い「寺子屋」ですが、「師匠への忠義のためなら他人の子も殺す」という考えが現代では到底共感を得られない上に、あまり動きのない会話シーンが多い一幕なので、山車の上に表現するのは難しいと思います。
やるとしたら見返し寺子屋で対峙する松王丸と源蔵夫婦でしょうか。
しかし寺子屋に投げ込まれる「詩の書いた紙が結んである松の枝」はどこかに盛り込みたいですよね!
そして梅王丸・松王丸・桜丸の三兄弟を表すように梅の枝」、そして「折れた桜の枝」、そして道真が詠んだという「梅は飛び 桜は枯るる 世の中に などてか松の つれなかるらん」という詩も山車のどこかに飾ると菅原伝授手習鑑の全容を知っている人には鳥肌モノかもしれません。


 

 

以上、からくり屋永匠堂の勝手な解釈による「菅原伝授手習鑑」の解説でした。

本当にぐいぐい引き込まれるストーリーです。

特に山車の上に表現するのは難しいのですが筆法伝授の段が一番好きです。

このストーリーの全容、登場人物の思惑などを知りながら「車引」の段をもう一度見るとまた少し違った表現方法が浮かぶかもしれません。

からくり屋永匠堂が勝手に考えた「菅原伝授手習鑑」の山車の構成でしたが人によって全く違う山車になると思います。

皆さんも色んなストーリーから色んな山車を想像して楽しんでみてください!

 

 

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